2022年 監督:サム・メンデス 主演:オリビア・コールマン 映画と映画館を愛する人ならばわかるのでしょう、その光の意味が。
あらすじ
不況の1980年代初頭のイギリス。海辺の街マーゲイトの昔からある映画館・エンパイア劇場で働くヒラリー(オリビア・コールマン)は、心に闇を抱えていた。
あるとき夢をあきらめ映画館で働くことを決めた青年スティーヴン(マイケル・ウォード)が現れる。
感想
撮影はロジャー・ディーキンス。美しくノスタルジックなオープニングにまず心を掴まれます。主役はまるで映画館の建物であるかのよう。
サム・メンデス監督が自らの母親をモデルに書き下ろした脚本は、オリビア・コールマンの独り舞台でもありますが、同時にメンデス監督の深い映画への愛が垣間見える、非常に私的な作品とも言えます。
監督が書き表した母親の面影は、その脳裏ではふんわりとしたものだったかもしれないけど、オリビア・コールマンが現実の女にすると、実に生々しくまた痛々しい表現になります。とても巧いのだけれど。
クソ男を演じたコリン・ファースをはじめとして、映画館のスタッフも、愛するスティーブンもどこかふんわりした「非現実的」感を漂わせていたのに対して、コールマンは生身の現実感がすごすぎて、まるで彼女の匂いまでしてきそうな気がしました。
この演出は、アンバランスかなと、終始違和感はありました。もちろんそれでも引き込まれ、満足はしたのですが。
ところで私も映画を愛するひとり。映画の中に出てくる過去の「映画」たちのチョイスが、私の趣味と合いすぎていてなんだか怖かった。
「炎のランナー」も「トランザム7000」もやったね、という感じですが、一番やられたのは「チャンス」。ヒラリー(オリビア・コールマン)が初めて映画を観るシーンに選ばれたこの映画。このチョイスにはグッときました。
ピーター・セラーズ扮するチャンスが池の上を歩いていく奇跡のシーン。あのときのシンプルな感動をメンデス監督と共有できているような気がして、なんともうれしい気持ちです。終盤のこのシーンは、映画好きのための特別なクライマックスに思えます。
映画というものは闇に光を当てる、もしくは闇と光の繰り返しのフィルムからできているものだけど、その光は人間に希望をもたらすのだ・・と。
それを踏まえて、やはり思いはオリビア・コールマンの現実的な存在が強すぎる、ということに戻ってきてしまいます。
(ひょっとしたら、欧米人はあの顔立ちが好きなのかもしれない)
この映画の評価は、きっとオリビア・コールマンを好きかどうかで大きく分かれそうです。