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『To Leslie トゥ・レスリー』感想

出典:映画.com

 

2022年 監督:マイケル・モリス 主役のアンドレア・ライズボローの迫真の演技は見事としか言いようがないです。ただ、ストーリーにはリアルさが欠けていました。

 

あらすじ

テキサス州に住むシングルマザーのレスリーアンドレア・ライズボロー)は、宝くじに当選して高額の賞金を手にする。

その6年後、レスリーはお金を使い果たしアルコール依存症になっていた。家もなく浮浪者のような姿で、離れて暮らす息子のもとに転がり込むが、酒を断ち切ることなどできるはずもなかった・・。

感想

アンドレア・ライズボローはすごいが

最低と言えるところまで落ちたレスリーが、運命のように出会ったモーテルの経営者スウィーニーによって救われ、その後ふと我に返り、再生への道を歩む。

 

筋書きとしては何となくリアルではないのですが、レスリーを演じたアンドレア・ライズボローがあまりにも真に迫っていたのでそれに圧倒され、最後までくぎ付けにさせられた感じです。

 

まわりの応援も功を奏し、アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされました。その価値はあるとは思います。

 

ただ、実際のアルコール中毒患者にこのように再生への道がうまく開かれるかというと、必ずしもそうではないのが事実。

 

リアルさに欠ける、というのはこのあたりです。

 

キッカケがわからない

ものごとは、何にせよキッカケというものがあるはず。アルコール中毒から脱却しようと思うキッカケ。そういう人を助けようと思うキッカケ。もしくは誰かを好きになるキッカケ。

 

映画を観ている人たちは、そのキッカケをみたくて観ているとも言えるのです。人が人の生きざまを鑑賞するのは、登場人物の気持ちに寄り添いたいから。それがドキドキでありワクワクなのです。

 

そのあたりがふわっとしていたら、物語への感情移入もふわっとしてしまうのは仕方が無いでしょう。

 

主人公が迫真の演技をしている、というそれだけで最後まで行けたようなものですが、いま一歩、観客の魂をつかむまでには至らない感じがしました。

 

 

人は再生できるから

しかし、この作品。そういう一方からの見方だけでとらえていいとは思いません。

 

なぜなら、人は実際に再生できるからです。

 

簡単ではないでしょう。失敗を繰り返し、そのまま再生できない人もいることでしょう。ですが自分の道を見出すことができる人達も実際に存在するのです。

 

この映画が我々に投げかけようとしているのは、この物語が愛が介在するメロドラマでありつつも、人が再生するというのは、偶発的であり、突発的でありながら、それはほとんど自分の意志の力によって達成するのであるということ。

 

レスリーが再生したのは意志の勢い。人間は意志の力で生きており、根底には誰かへの愛があるにしても、彼女の意志は、あるとき突風のような勢いを持つことができた。

 

これはレスリーの強さです。そしてきっとそういう人が実際に何人もいて、アンドレア・ライズボローにいっせいに憑依したに違いありません。

 

 

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