完成までに10年を費やしたこの作品。見なくてはならないのは塀の向こうであり、聞かなくてはいけない音はずっと背景に流れているのです。
あらすじ
1944年、アウシュビッツ強制収容所の所長ルドルフ・ヘスとその家族は、収容所と塀を隔てた美しい庭のある邸宅に住んでいた。
そこからは収容所の焼却炉の煙が24時間見え、恐ろしい断末魔の声や匂いもとどいてくる。
それなのに妻のヘートビヒ(サンドラ・ヒュラー)は庭の花のことや、収容所のユダヤ人から搾取した洋服や装飾品のことで頭がいっぱい。
そして夫のルドルフの関心事は自らの出世のことだった・・
感想
関心領域とは収容所の周囲40メートルの敷地のことを指します。そんな近くに家族と住んでいたなんて普通の神経じゃないですね。
絵空事ではない、本当に行われていたことなのだと思い知らされるシーンは、後半に挿入される現在の収容所の様子。一度に死体を400~500焼ける巨大な焼却炉や、おびただしい数のユダヤの人々の靴の山。
ですがホロコーストのことをあまり知らないままにこの映画を観ると、何のことかわからないつまらない映画と思ってしまうかもしれません。
授業ではあまり触れることがないので、多くの日本人はこの映画を観てもポカーンだったりするでしょう。
しかし80年前の地球上で起きた、愚かなこの悲劇を、知らずにいるのはもっと愚かなことです。
いま日本人が見過ごしている世界の悲劇を、ただの他人事ではないと少しでも思える人が増えてほしいと思います。
企画から完成まで10年を費やしたというこの力作。悲劇の様子を直接描かないにもかかわらず、恐ろしさがズンと胸に残ります。
アマプラで観ようと思われている方へ、どうかアウシュビッツ強制収容所とホロコーストを検索してからにしてほしいです。