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『木挽町のあだ討ち』感想/江戸情緒とミステリー

出典:映画.com

 

渡辺謙の出る映画に駄作は無いと勝手に思っていましたが、この映画もまちがいなかった。江戸時代の芝居小屋の再現の美しさも良し、あだ討ちシーンも迫力ありました。

 

あらすじ

 

江戸・木挽町の芝居小屋「森田屋」の忠臣蔵が千秋楽を迎えた。その夜、雪の降りしきる中で若侍の菊之助(長尾謙杜)があだ討ちを遂げた。200人以上もの芝居小屋の客の前で。

 

それから1年半後、一人の侍が森田屋にあらわれた。菊之助の縁者と名乗る加瀬総一郎(柄本佑)だった。

 

感想

 

まちがいなく面白い映画。江戸情緒豊かな設え、賑わう芝居小屋の再現も素晴らしい。また、ストーリーは原作よりもミステリー度を高めてあり、それはそれでいいでしょう。雪の中の紅い血、というのはまるで映画にするためのシチュエーションのようです。

 

あだ討ちシーンも長尾謙杜の切れのある殺陣もあり実に見ごたえがあった。ダンスの下地があってこそでは。北村一輝の演技にも魂がこもっていました。

 

またあだ討ちの原因となった刃傷沙汰シーン、そのほかのシーンも作り手のこだわりがみえて何度も胸が熱くなり、作品への思いが伝わりました。

 

森田屋の面々も生き生きと演じられていました。すべてが江戸言葉ではなく現代語の冗談を言うのも、私はありだと思っています。

 

ただ、ミステリー要素を高めたということはそのぶん、原作のほとんどを占めていた森田屋の面々の背景を語るシーンが最低限に短くなってしまったということ。

 

その「背景を語る」のがスリムになったがために、決定的に困ることが起きてしまった。それは、主人公の目的が原作と映画では全く違ってしまったということ。これはつまり、原作と映画は別物と思ったほうがいいということです。

 

映画の途中でそのことに気付き、私も映画側にシフトして楽しむことにしよう、と思ったわけですが、それならばもっとちゃんとミステリー的に締めくくるほうがよかったと思います。

 

ひょっとしたら、原作を読んでいないほうが純粋に楽しめたのかもしれません。原作の江戸情緒あふれる人情噺は、ほんとうに心熱くなる物語でしたので。

 

映画は原作のスピンオフ、と考えたらすっきりするかもしれません。あの江戸の繁華街・木挽町の芝居小屋を可視化した、何百年も昔の桃源郷のような世界。それだけでも観る価値はあるでしょう。

 

総体的に見て、良質でおもしろい作品であることは間違いありません。

 

それにしても安定の演技の渡辺謙。謙さんが出ているシーンだけ格調が高くなります。煎茶を丁寧にいれるシーンがあり、NHKの「京都人の密かな楽しみ」でも教授室でよくお茶をいれていますが手慣れたもの。美濃の出なので白川茶に馴染んでいたという設定なのでしょう。

 

そういう細やかな演出の積み重ねもみられたこの作品。原作を読んでいない人と一緒に観ましたが、すごくよかったと興奮気味に感想を述べていました。ひょっとしたらあとから補足的に小説を読んでも良いかもしれません。

 

 

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