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『658km、陽子の旅』感想:菊地凛子の実力を見せつけられた作品

出典:映画.com

 

2023年 菊地凛子主演 熊切和嘉監督 上海国際映画祭で最優秀作品賞・女優賞・脚本賞の三冠。菊地凛子は日本映画では初の主演だそうです。

 

あらすじ

コミ症の42歳の独身女性・陽子(菊地凛子)は、人生をあきらめ、フリーターとしてなんとなく生きていた。

 

そんなある日、疎遠になっていた故郷・青森にいる父が亡くなったという知らせが届く・・

 

感想

 

全編菊地凛子の独り舞台と言っていい作品。確かに演技はうまい。ひきつけるものを持っています。(ただし彼女を好きではない人は難しいかも)

 

42歳、独身のフリーター。コミ症のため人とかかわりを持たない在宅でのバイト生活。人生をどうするとか、考えることもしていない、うつろな日々。冒頭での菊地凛子の演技は、いつもの溌溂とした明るい美しい姿とのギャップに「さすが」とまず思います。ちょっと演出がしつこいですが。

 

コミュニケーションがうまく取れない人が、お金もなく取り残されたらどうなるか。最悪のシチュエーションから、どう切り開いていくのか。

 

それ自体がまるでサスペンスだなとさえ思いましたが、このロードムービーは、やはりという展開で、だんだん感動へと導きます。

 

何か心に傷を負うことで、殻に閉じこもることになったのだろうなと予想させる、丁寧な脚本。これはじっくりと鑑賞したい作品です。

 

いちども笑わなかった陽子ですが、終盤に向かって感情がちゃんと出るようになっていきます。ラストシーンは陽子の後ろ姿。観客は、このあと陽子はきっと生まれ変わるだろうと思いながらその姿を見送ります・・

 

 

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