1987年 西ドイツ映画。独特な世界観で世界中にファンが多く、手を加えられ何度もリバイバル上映されています。
あらすじ
ラスベガス近郊の道路沿いに建つうらぶれたガソリンスタンド兼モーテルの「バグダッド・カフェ」。ここにはいつも怒ってばかりの女店主ブレンダや、モーテルにずっと居座っている変わった住人たちがいた。
あるとき西ドイツからラスベガスに観光で訪れ、夫と喧嘩して車を降りてしまった太った中年女が店に立ち寄る。
女の名はジャスミン。モーテルにしばらく滞在するという。
しかしブレンダはジャスミンのことが何か気に入らない。持ち物が不審だと保安官を呼んで旅券を調べるが何の問題も無いとわかる。
それでもブレンダは、どこか品があり温和な雰囲気でまわりと打ち解けていくジャスミンのことが鼻につき、いっそう怒りが増すばかり。
汚れた店の掃除をしたり、子供たちが完全に懐いたジャスミンに対して、ブレンダの怒りは爆発する。 「自分の子供を相手にしな!」
それに対してジャスミンは「子供はいないの・・」と答える。
ブレンダははっとする。「傷つけるつもりはなかった、どうかしてた」
感想
これといって大事件は起きない映画です。どこかへ行くわけではないけれど、ロードムービーのようでもあります。
80年代のアメリカ。この店の人たちの過去に何があったか、主人公ジャスミンがどうしてここに来たのか、夫との関係はどうなったのか、そういう説明は何もありません。
だけどそんな説明はいらないのです。名曲「コーリング・ユー」の調べにのって砂漠の黄色い給水塔が映り、乾いた風が舞う、それだけでみんなが何かを背負っていることが伝わります。
ブレンダとジャスミンは映画の後半ではかけがえの無い友情で結ばれます。ちゃきちゃきで怒りっぽいブレンダとほんわかしているが芯が強いジャスミン。性格も人種も国も違う二人は初めて会ったときに自分に無いものを感じ合っていたのでしょうか。
ラストシーンのジャスミンの最後のセリフは、「ブレンダに相談するわ」。
何に対して答えたのかは内緒です。でも結構大事なことへの回答なので、この答はしゃれてます。
そして暗転し「コーリング・ユー」が始まる。余韻が半端ないうまさです。