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あのとき見逃した映画は名作だったかもしれない

『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』映画のあらすじ&感想

2023年 ニコラス・ウィントンを演じたアンソニー・ホプキンス。この人があのハンニバル・レクター博士だなんてまったく思えない。御年86歳。あの頃の勢いはもう無いが、老練な芝居は健在。

 

あらすじ

 

第2次世界大戦直前の1938年。ナチスから逃れてきた多くのユダヤ人難民がプラハで悲惨な生活を強いられていることを知ったニコラス・ウィントン(ジョニー・フリン)は、子どもたちをイギリスに避難させる活動を組織し、同志たちとともに里親探しや資金集めに奔走する。

 

ナチスの侵攻が迫るなか、子どもたちを次々と列車に乗せていくが、ついに開戦の日が訪れてしまう。それから49年後、救出できなかった子どもたちのことが忘れられず自責の念にかられ続けていたニコラス(アンソニー・ホプキンス)のもとに、BBCの番組「ザッツ・ライフ!」の収録への参加依頼が届く。そこで彼を待っていたのは、胸を締め付けるような再会と、思いもよらない未来だった。映画com.

 

感想

 

物語は1987年のニコラスの回想のかたちで1938年が挿入されていきます。ナチスドイツの勢いが増してくる様子と、追いつめられるユダヤ人難民の描写は、的を絞ってわかりやすく伝わります。

 

今では遠い昔の出来事である第2次世界大戦。1987年当時には存命だった人々も現在はほぼおられないでしょう。BBCのワイドショー番組で感動の再会をして有名になったニコラス・ウィントンさんも2015年に亡くなりました。

 

だけど、誰もいなくなったからといって無かったことにはならない。

 

私たちはあの涙を流すアンソニー・ホプキンスの芝居に心を動かされ、そしてこのようなことがもう起きてはならないと心に刻むことでしょう。

 

ただしこのドラマは、流れもリズムも心地よすぎて、逆に違和感となっているのが残念なところ。「今はすっかり平和な世界」になったわけではないということが、心の片隅に湧いてくるのです。

 

「平和な世界をつくらなければならない」と言われながら我々の無力さを痛感させられる中、この映画は今の私たちに何をもたらすのでしょう。ワイドショーのように一過性で消え去るのか。

 

せっかくのアンソニー・ホプキンスを観ながら、ふとそんなことを思う110分でした。

 

口元がちょっと似ている青年時代のニコラスを演じたジョニー・フリンや、すっかり善良な人になったレナ・オリン。セリフのすべてが直球で来るヘレナ・ボナム・カーター

 

他の役者さんたちもすべて熱演でした。今の世界情勢から他人ごとではないという意識を持っているのを感じます。

 

それなのに、どことなく漂う違和感。めでたしめでたしで終わる流れが、「違う」という気持ちになってしまう。

 

何かが違う。そう、この映画の作り手は2023年にこの映画を作ったことの重要性をどう考えたのでしょう。それとも、様々な問題がありすぎてうわべだけの話にならざるを得なかったのか。ひょっとしたらそうなのかも・・。だとしたらこれ以上突っ込んではいけないですね。

 

まあ邦題の付け方の安易さのせいにでもしておきましょうか。

 

(6000人というのは当初の難民リストに6000人とあるが実際には669人しか助けられなかったけど、それでも子孫を合わせると6000人以上になるっていうこじつけ。それにしても奇跡って使いすぎじゃ?)